2012年1月26日 (木)

姉妹

Photo家城巳代治監督の「姉妹」を観た。
BSでやっていたので観た人も多いだろう。
貧しくも思いやりに満ちた人々の苦悩と希望を描いた作品だった。
凛として冷静な姉(野添ひとみ)、純真で素直な妹(中原ひとみ)。
二人は考え方や生き方もちがうので時には仲たがいもするが、礼儀正しい人格を持っている。
心が通いあっているからこそ、お互いの個別性を尊重している。
そんな二人が様々な悩みを抱きながら、結婚する姉を妹が見送るという物語。
天真爛漫で、明るくて、まっすぐで、思っていることを素直に口にする中原ひとみがはつらつと輝いている。
「ひゃっこい!なあんだ、ヘビみたいだね、キャハハ」
女学校の友人に友情の証しとしてキスしようと言われ、女同士でキスをした後で中原ひとみがこう言って屈託なく笑う。
ラスト、バスで嫁ぐ姉を見送るため中原ひとみが山を駆け上るシーンは「初恋の来た道」のチャン・チーを思わせる。
清廉で素晴らしい作品だった。
日本映画にはまだまだ隠れた名作がたくさんあることを思い知った。

監督:家城巳代治
公開:1955年

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2012年1月21日 (土)

夏至

Photo ベトナム、ハノイで暮らす三姉妹の心の動きを繊細に描いた作品。
母の命日に、久しぶりに3姉妹が集まった。
屈託なくふざけあう三姉妹だが、日々の暮らしの中に皆それぞれの事情や葛藤を抱えている。
映画は3人姉妹のエピソードをオムニバスのように描いていく。
ゆっくり流れるベトナムの生活観が興味深い。
緑色の風、輝く葉っぱたち、汗ばむうなじ、勢いよく走り去る雨…
瑞々しく色彩豊かな映像が素晴らしい。

以前タイの田舎に行ったとき雑貨店の軒下で雨宿りをしたことがある。
軒を打つ雨音の中に現地のおばちゃんたちの会話が聴こえてきた。
何をしゃべっているのか分からないが、雨音とその言葉の響きに癒されたことがある。
ベトナム語とタイ語では違うだろうが、この作品にも観る者の心を穏やかにしてくれる趣がある。

監督:トラン・アン・ユン
公開:2001年
宣伝:夏の日の秘めごと わたしの恋が熟れていく

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2012年1月17日 (火)

素晴らしき哉、人生!

Photo 「素晴らしき哉、人生!」は、人間が絶望の中でいかに希望を見出すかを描いた作品。
幼い頃からツキに見放されて育った主人公(ジェームス・スチュワート)は大金を失い、絶望のあまり川に身を投げようとする…
そこに初老の二級天使クラレンスが登場し愛と善意の必要性を語りかける。
フランク・キャプラの理想主義的な作風は「世の中そんなに甘くない」などと批判されることもあるが、心を揺さぶるラストの感動や見終えた後の清々しさは、そんな批判を吹き飛ばしてしまうだろう。
キャプラは生涯を通して理想主義を信じ続けた。
人生は辛いことばかりだけれど、棄てたものじゃないな、と思える映画だ。

監督:フランク・キャプラ
公開:1954年

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2012年1月11日 (水)

誰かに見られてる

Photo リドリー・スコットは人気のある監督だが「エイリアン」や「ブレードランナー」などの作品に、僕はあまり興味がない。
ケレン味のある映像ばかりが先行し人物の描き方が希薄で感情移入できないからだ。
ところが「誰かに見られてる」は、リドリーのそれまでの作風とは異なり、大人の恋愛映画としてはなかなか見応えのある作品になっている。
富豪の娘クレア(ミミ・ロジャース)は、あるパーティで偶然に殺人事件を目撃してしまい、犯人から命を狙われる。
刑事マイク(トム・ベレンジャー)は、クレアの護衛を命ぜられ、彼女と行動をともにするようになる。
妻子と共につましい暮らしを送っていたマイクは、住む世界の違いに戸惑いながらも高嶺の花のクレアに惹かれていく。
そしてクレアも、妻子持ちと知りながらマイクの素朴さに惹かれてしまう…
サスペンスとして観ると物足りないし、設定も古めかしい。
しかしリドリーは、二人の不倫愛を情感豊かで上質な恋愛映画に仕上げている。
NYの街の描き方、音楽の使い方、全編に漂う落ち着いた雰囲気もなかなかいい。
そしてミミ・ロジャースのゴージャスさは、何度見てもうっとりしてしまう。
ガーシュインの名曲「Someone to watch over me」が、オープニング〈スティング〉とエンディング〈ロバータ・フラック〉に使われている。

監督:リドリー・スコット
公開:1988年

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2012年1月 7日 (土)

エンゼル・ハート

Photo SFやオカルト色の強い作品は何でもありになってしまうので僕はあまり好きではないが、この作品には引きこまれた。
「エンゼル・ハート」は、細やかな伏線と暗示的な映像で緊迫した恐怖を感じさせる一級のサスペンス映画。
サイコサスペンスとして、D・フィンチャーの「セブン」や「シックスセンス」などの先駆けともなっている。
うらぶれた私立探偵ハリー(ミッキー・ローク)は、謎の男サイファー(ロバート・デ・ニーロ)から、失踪した人気歌手の行方を探してくれとの依頼を受ける。
しかし、その調査をするハリーの周辺で次々と凄惨な殺人事件が起きていく。
事件の全貌を究明しようとするハリーは、どんどん追い詰められ逃げ様の無い閉塞感中に迷い込んでいく。
いろいろな恐怖感があるが、自分が関係した過去の出来事のせいで、知らず知らずにそのツケを払い続けていくしかない無間地獄のような恐怖が一番怖い。
みすぼらしく脱力した探偵役のミッキー・ロークの渋さと、ロバート・デ・ニーロの悪魔的な怪演が見もの。

監督:アラン・パーカー
公開:1987年

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